非圧縮のHIGH QUALITYディスクを採用
まずディスクについて。 本SACDは「HIGH QUALITYディスク」と呼ばれる「非圧縮SACD」です。
通常のSACDディスクは「ロスレス圧縮」されており、プレーヤーで解凍して再生しているのですが、この「HIGH QUALITYディスク」では解凍作業が不用のためプレーヤーの負担が軽減。再生音がよくなるという狙いです。
非圧縮のためデーター量が増えるのでしょう、もはやクラシックSACDならあたりまえの5.1chはなし。ステレオだけの収録です(もちろんハイブリッドではあります)。
柔らかいオケの音と、ピアノの打鍵音
聴いてみると、確かに再生音は薄く一皮むいたような伸びのよさを感じます。音質も、厚みがあるくせに、やわらかいという、なかなかのものでした。特にチェコ・フィルの弦、管楽器ともやわらかく、かなりいい音だと思います。
ピアノは通常のピアノ協奏曲の録音よりは、接近気味の音ですが、オーケストラとのバランスがいいので気になりません。
むしろ接近気味ゆえ、一音一音の打鍵がコツンとあたる、そのニュアンスが感じられて、ここでも音のよさを感じました。バルトークならともかく、モーツァルトを聴いて「ピアノって打楽器なのだなあ」と思うのも珍しい。
特徴的な2曲、オケ、ピアノとも堪能できる
収録曲は第23番と第24番。第23番は晴朗なイ長調、第24番は哀しく重いハ短調(『ドン・ジョバンニ』風の不安な音楽が顔を出す)。どちらもモーツァルトの代表的な曲なのでカップリングはバッチリです。
どちらの曲も、第1楽章前奏のオーケストラの演奏だけで、まずホレボレしてしまいます。
チェコ・フィル、すごくいい響きとニュアンスです。特に第24番は交響的な曲なので、バッキングをオーケストラの音楽としてチェコ・フィル(そしてもちろん、モーツァルトのスコアも!)を堪能してしまいました。
清水和音のピアノは、よくいるモーツァルト弾きの、入り口の柔らかい打鍵ではなく、どちらかと言えばゴツゴツとしたもの(先の打鍵の感想もそのせいか)。
しかし、これもいいなと思いました。楷書のようなキビキビとした動きの中に、何度も聴くと微妙なニュアンスが吹き込まれているのに気づき、「これでちょうどモーツァルトにピッタリじゃないか」と思ってしまいました。本SACDにはダイレクトカット盤もあります(下)。
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ダイレクトカットSACD
 2010.4.8
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