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シャイー指揮ミラノ・スカラ、ゲオルギュー、アラーニャ
プッチーニ:歌劇〈ボエーム〉(全曲)

ディスク


録音1998年
輸入盤、デッカ
SACDハイブリッド2枚組

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昔ながらの厚いCDプラケースに2枚収録。プラケースとブックレットをひとつの箱に収めたオペラでよくある収納。
ブックレットは288ページで厚さ1センチ。
伊仏独英の全曲歌詞。
フランチェスコ・デグラーダによる新校訂版の解説「The Real Boheme」、リッカルド・シャイーによるライナー「Performing la boheme」も4カ国語で掲載。
写真と楽譜はほんの数点。

プッチーニの余情あふれる青春オペラ、新改訂版での初録音。

 歌劇〈ボエーム〉はプッチーニの代表作。若き詩人、画家たちが、たとえ貧乏でも青春を謳歌しているところが、現代人にも共感するストーリーです。
 毎度、プッチーニならではの甘いメロディーは恍惚としますね。有名なアリア「わたしの名はミミ」は何度聴いても胸がキュンときます。
 そのミミを歌うのがアンジェラ・ゲオルギュー。
 ゲオルギューは、どこか声に影があるところが薄命のミミにはぴったりです。ミミの恋人、詩人のロドルフォにはテノールのロベルト・アラーニャ。
 どちらも有名な歌手ですが、ふたりは私生活でも親密な関係らしく、気のあったアンサンブルを聴かせてくれます。

 指揮はリッカルド・シャイー。ミラノスカラ座Oの演奏。
 この録音はデクラーダによる新校訂版での初録音盤です。それを生かすシャイーの指揮も素晴らしく、テンポ、アクセント、フレージングが大変みずみずしく、プッチーニの書いたスコアが、よりドラマチックに、輝度50%アップしたようなまばゆさです。
 プッチーニ特有の〈感傷〉にドップリとつかりながらも、まるで交響曲のようなガッチリとしたオーケストラの支えが快感。旋律に酔いながらも音響に耳がいってしまう。まるでリムスキー=コルサコフの管弦楽を聴くようにクラクラとするオーケストラの音です。

「音の立体感」と「広がり」を演出するサラウンド

 まず音は太い音。気に入りました。
 マルチチャンネルは、2chステレオの音場を拡大するようなサラウンドで、自然体の空間。仕上がりはとてもいいと思います。
 5本のスピーカーのせいで、歌声は立体感が増したように思います。もちろんサラウンドの広がりもうまく使っていて、前方は180度扇状にたっぷりとした空間を作り出しています。第2幕の酒場のシーンは狭苦しくなく雄大です。
 さらに、演出上可能なところは、左リア側から人の声が出てきて前方に移動するという演出もあります。
 ちょうど歌舞伎の「花道」にも似ていますが、時に単調になる「耳だけで聴くオペラ」に視覚を思わせる刺激を与えてくれ、リスニングが楽しくなるところです。これは違和感がありません。
 すばらしい歌手に溌剌とした演奏。分厚い音に、いいサラウンド。〈ボエーム〉を堪能するには持ってこいのSACDだと思います。

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2010.6.30