バーンスタインのエネルギッシュな〈カルメン〉
PENTATONEがドイツ・グラモフォンの70年代4チャンネル録音を復刻した〈リマスター・クラシック・シリーズ〉でSACD2枚組。

さっそく、マルチチャンネルで聴いてみました。
有名な「前奏曲」。バーンスタインのテンポは遅めで、なんだかアクセルとブレーキの両方を踏んでいる感じ。
1972年の録音なのに、“晩年のバーンスタインの様式”が早くも出ているのかもしれません。いきなり、このテンポには驚きますが、こういう「前奏曲」もいいでしょう。
しかしそれ以降は、もうバーンスタインのエネルギッシュな演奏が炸裂です。
〈カルメン〉は、モーツァルトの〈魔笛〉以上に、オペラ作品としては、ポピュラーでエキサイティングなメロディの連続ですが、バーンスタインの演奏でその感を増々強くしました。
なんだか〈ウエスト・サイド・ストーリー〉を聴いている時のような興奮が、〈カルメン〉にも乗り移ったようです。
カルメン役のマリリン・ホーンとドン・ホセ役のジェイムズ・マクラッケンも熱唱です。
4チャンネル録音の醍醐味は、広がりと音艶にあり
マルチチャンネルのサラウンド空間は、前方の音が雄大に広がる感じです。リアはアンビエント音が主で、ホール・トーンというより、シンプルにオーディオ的な広がりをもたせた空間。ただ演奏が終わった瞬間の残響は、リスニングルーム全体に消えていく感じです。
70年代のチャンネル録音だけあって、ときおりストーリーの進行に合わせてリアにも音を入れて効果を狙っています。2枚目の第2幕後半では、歌手のアンサンブルが、リアだけで繰り広げられるところは面白いです。
でもそれは一部で、ほとんどはフロント主体。
それよりもこの4チャンネル録音の醍醐味は、バーンスタインのエネルギッシュな〈カルメン〉が、ダイナミックな広がりで聴けることでしょう。
もうひとつ、サラウンドのせいか、立体的に漂う音の「艶」も気に入りました。ソロの管楽器とか、カスタネットの響きとかで、まわりに空間があると、72年録音とは思えない「音艶」を感じます。
これって、PENTATONEの〈リマスター・クラシック・シリーズ〉を褒めていいのか、ドイツ・グラモフォンの4チャンネル録音を褒めていいのか分かりませんが、とにかく素晴らしい〈カルメン〉でした。

BIZET: CARMEN
Leonard Bernstein
▶Tower Records
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 2015.4.27
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