エリザベス朝の歌を、エマ・カークビーの晴朗なソプラノで
エマ・カークビーは80年代始めくらいから活躍している歌手。
ビブラートを排したその晴朗な歌声は、とても印象的です。
そんなエマ・カークビーのSACD。
伴奏のリュートは旦那さまのアントニー・ルーリーが弾いています。
ダウランド(1563-1626)はエリザベス朝時代のリュート奏者で、
ヨーロッパのいろいろな国を遍歴、お付のリュート奏者をつとめました。
しかし帰国後、ダウランドは女王エリザベス1世につかえる夢をもったのだが、
女王のほうはダウランドを採用しなかった。なんか哀しい人生を歩みました。
そのかわり、女王エリザベス1世やいろいろなパトロンのために
珠玉の歌曲を作曲したのは、後世のわたしたちには幸運だったと言えるでしょう。
このSACDのタイトル「蜂の巣から蜜」も、女王蜂のために、
せっせと蜜(歌曲)を作りだしたダウランドの生涯をたとえているわけです。
一聴して薄味、だが、これが濃い
さてダウランドの歌曲。先に書いたように伴奏はリュートのみです。
リュートはほんとうに消えそうなか細い音。
そこにカークビーの透明な声が、しっかりと歌い込んでいく。
普通のクラシックにくらべると年代が古いので、バロックとくらべてさえ、
ダウランドの曲はほんとうにシンプルです。
シンプルだけでなく薄味。初めて聴いた人は、
たとえると「塩を入れないおにぎり」くらい、頼りないものに感じるかもしれません。
でも、がまんして聴くと、これで十二分に味があるのがわかります。
それに気づけばシメたもの。
素晴らしい曲の数々は一生の友達になることは間違いありません。
歌詞が英語なのも、日本人には、心に染みる助けになってます。
残響たっぷりの空間を聴きましょう
カークビーの歌声は、今までのCDでも、ホールや修道院の残響を生かした録音でしたが、
このSACDもたっぷりとした残響のなかで歌われます。
リュートとソプラノだけ、という最小音を、
高音質のSACDで鳴らすのですから、贅沢な再生です。
2chステレオでは伸びやかに声と残響音が広がります。
マルチチャンネルでは、それが完全に回り込んで、ひとつの空間になります。
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2006.4.27
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