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交響曲│管弦楽曲│協奏曲│室内楽曲│器楽曲│鍵盤楽器│歌劇＆声楽曲

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PENTATONEのSACDハイブリッド、プッチーニの歌劇「外套」（Puccini:Il Tabarro）である。マレク・ヤノフスキ指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。マルチチャンネルも収録。2019年3月、ドレスデンでの録音。

全1幕、49分ほどの聴きやすいオペラ

「外套」は1幕のオペラで、「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」とあわせて三部作として上演される。しかし各作品は単体で（または他の作品と組み合わせて）上演されることもあるし、音楽ソフトでも昔から単体で録音、発売されることがあった。本作もそんな1枚だ。

なにせ「外套」だけだと演奏時間が短いのがいい。本作の場合49分42秒。ちょうどポップスのアルバムのような長さなので、聴き始めたら最後まで聴ける。精神衛生上とてもよろしい。

ドビュッシー風（？）の冒頭、そしてプッチーニらしいアリア

物語はパリのセーヌ河のほとりが舞台。主な登場人物は荷物船の老船長ミケーレ。その妻ジョルジェッタ。そしてミケーレの部下ルイージ。

オペラが始まると、オーケストラはプッチーニというよりもドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」のようなな音楽だ。靄のかかったように沈んだ音楽。PENTATONEがジャケットに選んだ写真のようにモロクロームな雰囲気だ。

セーヌ河の水の雰囲気を出したいのだろうか、オーケストラは舟唄のようなリズムを刻みながら、オペラを進める。

しかし最初こそドビュッシーを思い浮かべるが、聴き続けるにつれやはりプッチーニのオペラだと実感すする。他の有名オペラほど名アリアが連発するわけではないけれども、歌声を追っているだけで面白い。一方で、時折パリの雰囲気を出すような調子はずれの警笛などが出てきて、プッチーニの他のオペラとはまた違う味わいもある。

オペラが一番盛り上がるのは中間のトラック9「Segui il mio esempio」、そしてトラック10「Belleville e il suolo e il nostro mondo!」のジョルジェッタとルイージの二重唱だろう。プッチーニ・ファンにはお待たせのプッチーニ節。このトラックだけでもプッチーニ・ファンは「外套」を所持すべきだろう。さらにジョルジェッタ、ルイージ、ミケーレによるトラック14「Dimmi: perche gli hai chiesto di sbarcarti a Rouen?」も、甘いテノールが聴きどころ。

プッチーニが書いたヴェリズモ・オペラ

あらすじを簡単に書くと、こうである。

船長ミケーレの妻ジョルジェッタとルイージは浮気をしていた。しかしそれがミケーレにバレて、ルイージはミケーレに殺されてしまう。「ウゥゥゥゥ…ゥ……」。

ミケーレはルイージの死体を外套の下に隠した。そこにやってきたジョルジェッタ。彼女の前でミケーレが外套を広げると、そこにはルイージの死体が。ジョルジェッタは「キャァァァァー！」と絶叫して幕。

つまり血生臭い題材を特徴とするヴェリズモ・オペラをプッチーニも書いたわけだが、冒頭のムードあるドビュッシー調から、最後の「キャァァァァー！」までディスク1枚で聴き通せるところが楽しい。そして聴きやすい。何度もプレーヤーに入れてしまうSACDなのである。

マルチチャンネルは自然な広がり

録音はPENTATONEなので言うまでもないだろう。マルチチャンネルは前方で綺麗に広がる音。全体はホールトーンのようでもあるし、自然な広がりのようでもある。しかし声楽は前方にフォーカスが定まりリアルに定着する。演奏音は2チャンネルと遜色のない構築感で、PENTATONEのサラウンドの完成度をうかがわせる。

なおPENTATONEのオペラ録音では、演出効果のために時折リアに声楽や合唱が位置することがあるが、本作ではそれはないようだ。

歌手
メロディ・ムーア(ソプラノ/ジョルジェッタ)
レスター・リンチ(バリトン/ミケーレ)
ブライアン・ジャグデ(テノール/ルイージ)
カニソ・グウェンクサーヌ(テノール/流しの唄うたい)
ロクサーナ・コンスタンティネスク(メゾソプラノ/ラ・フルゴラ)
シメオン・エスパー(テノール/イル・ティンカ)
マルティン=ヤン・ネイホフ(バス/イル・タルパ)
ジョアンヌ・マリー・ドメロ(ソプラノ/恋人たち)
キム・ヨングン(テノール/恋人たち)
ライプツィヒMDR放送合唱団
イェルン・ヒンネルク・アンドレーゼン(合唱指揮)

2020年12月10日