topaboutblogClaJazzpopsjpopselect
S

DAVID HAZELTINE~GEORGE MRAZ TRIO
MANHATTAN


輸入盤、CHESKY RECORDS

Amazon

デビッド・ヘイゼルタインのピアノ・トリオの演奏は、ビル・エヴァンス・トリオのムード、延長線にあるものと言ってさしつかえないだろう。しかしオーソドックスながら、博物館入りしたピアノ・トリオの芸ではないことだけは確か。うまくいえませんが。ヘイゼルタインのピアニズムは、ビル・エヴァンスの亜流に終わっていない何かがあると思う。前向きにひっかかるものがありますね。ドラムとベースも、同じく心にひっかかる演奏。両者ともこまかいプレイを追っていくと楽しい。

高音質を生み出すのは作り手の思想?チェスキー・レコーズのSACD

 高音質で有名なチェスキー・レコーズ(Chesky Records)からのSACD。デビッド・ヘイゼルタインのピアノ・トリオの演奏です。

 このSACDを聴くと、「高音質を生み出すのは、腕やカネより、まず作り手の思想だな」と思い知らされます。
 チェスキー・レコーズのこだわりは次のようなもの。

  1. ワンポイント・マイクによる録音
  2. オーバー・ダビングはなし
  3. マルチトラックはなし
  4. コンプレッサーは使用しない
  5. ミキシングコンソールも使用しない

 「なんだ、シンプルにしたってことね」
 これだけ読むと、どうってことないことなのですが、実際にSACDステレオで聴いてみると、すごくジェントルで自然な響きでした。

 ワンポイント・マイクのせいでしょう、各楽器の音というより、それぞれの楽器が溶け込んでいる音が聴けます。たとえばピアノの低音とシンバルの音が溶けこんでいるような気がする。音楽として当然あってしかるべき、各楽器のブレンド感が心地良いのです。

 チェスキー・レコーズのやり方は、そんなにむずかしいことではないと思うのですが〈神経はつかうかもしれないが)、どうして他社がこういう録り方をしないのか不思議なくらい。
 これにくらべると、よくあるスピーカーからガンガン、生で出てくるピアノ、という録音は暴力的にさえ思えてしまいます。ベースも、弦の前に頭をもっていかされて聴かされる音とはちがい、「実際に聴くときはこうだろうなあ」という、迫力より、ナチュラルな響きです。

 SACDステレオでこれだから、マルチチャンネルは蛇足だろう、と予想したのですが、マルチで聴いてみるとさらに「水を得た魚」ならぬ「水を得た音」状態でした。
 水とはリスニングルームにひろがる残響音のことで、音楽を実際に聴くときにかかせない豊かな残響が、実際にリスニングルームにできあがって、そこに先の演奏が響くのでした。
 ちょっと中毒になりそうな音です。今夜もこの音に浸りたくて、SACDをかけてしまいそう。ステレオかマルチかは、お好みしだい。

Amazon

CHESKYのSACD
Javon Jackson、Jimmy Cobb他/New York Time
シンプルな録音、加工なしの高音質
Amazon
Manhattan
高音を生み出すのは手作りの思想?
SA-CDラボレビュー
Traffic
エレクトリックな演奏でもこだわりは同じ
SA-CDラボレビュー
CHESKY RECORDSのSACDをまとめて見る

2006.9.17