
Valery Gergiev
Wiener Philharmoniker
Moussorgsky
Pictures at an exhibition
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録音『展覧会の絵』2000年4月ウィーン楽友協会ライブ、その他 2000年12月
輸入盤、Phillips
角の丸いプラケース。ブックレットには英仏独の解説。『展覧会の絵』の作曲のもとになった、画家ハルトマンの絵を3点掲載。
収録曲
ムソルグスキー:
・組曲『展覧会の絵』
・歌劇「ホヴァンシチナ」前奏曲(ショスタコーヴィチ編) ・交響詩「禿山の一夜」(リムスキー=コルサコフ編) ・歌劇「ソロチンスクの定期市」からゴバック(リャードフ編曲)
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このSACDはマルチチャンネル収録のハイブリッド盤で、現在は品薄ですが、演奏、マルチチャンネルとも素晴らしかったので、レビューしてみます。
ラヴェルのフランス風エッセンスから、ロシア風へ
ロシア物では卓越した演奏を聴かせるギルギエフ。『展覧会の絵』もゲルギエフの棒にかかると違った印象を受けたのでした。
完璧なポピュラー曲として隙のない構成(だから逆に退屈)に思えたラヴェル編の同曲が、どこか余白の多い、発展途上の曲に思えます。ベテラン・クラシックファンにはこれが味わい深いでしょう。
音楽的に言えば、泥臭く、民族的な感じ。それが、あのウィーン・フィルの演奏で実現しているというのですから痛快です。
枝葉に耳を傾ければ、ストリングスはあいかわらずウィーン・フィルらしいシルキー・サウンド。木管、金管も綺麗です。でも全体を見ると「ロシアの森」なんですね。
ラヴェルによってフランス風エッセンスをまぶされた同曲が、ふたたびムソルグスキーの手に戻ったようです。この演奏を聴くと、リスナーはロシアの土壌を徘徊している気分になるのではないでしょうか。「キエフの大門」では、ウィーンっ子が“土着的荒々しさ”でしめくくってくれます。
ホールトーンに溶けたサウンドだけに、マルチで聴いてほしい
2chステレオはホールトーンに溶けた綺麗な音です。
先に書いたように、ヴァイオリンは繊細なシルキー・サウンド。コントラ・バスはゴリゴリと、たっぷりした低音を鳴らします。
これはこれでいいのですが、マルチチャンネルではさらに、音に立体感がでます。
ホールトーンは無理なく背中の裏まで回り込む。最初、鳴り過ぎのような気もしますが、慣れると、2chの音は額縁にはめられた音のように思えてしまいそう。
楽器間の距離感も快感です。また指向性のあるトランペットは、輝きを持ってこちらに飛び出し、ストリングスやサックス、中音管楽器は、ふわっと全体に広がります。楽器独自の音の広がり方が、3次元のサラウンドではとてもよく感じられました。
あとオーケストラの強烈なトゥッティのあと、残響音が一瞬遅れて、波動のようにリスニングルーム後方に到達するところは、このマルチで初めて感じられた部分でした。
「ホヴァンシチナ」「禿げ山の一夜」などの埋め曲も素晴らしい
「ホヴァンチシナ」前奏曲は、初めて聴きましたがいい曲ですね。
まるでイタリアのオペラのような歌謡性です。「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲の、ロシア版のような感じでさえあります。
「禿げ山の一夜」も文句なし。埋め曲でもゲルギエフの演奏は本当にいいと思います。
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同タイトルのSHM-SACD
ゲルギエフのSACDレビュー
 2011.4.5
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