

録音2001年
輸入盤、Philips
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角の丸いプラケース。
併録曲は次の2曲。
・交響詩「中央アジアの草原にて」(ボロディン作曲)
・イスラメイ(東洋風幻想曲)(バラキレフ作曲/リアプノフ編)
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ポピュラーな曲ゆえ、リスナーの要求は高い
リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」は、〈千夜一夜物語〉から題材をとった曲で、エキゾチックなメロディ、胸躍るリズムで人気の曲です。クラシック初心者の人にも、入門用にいいと思います。
ところがクラシックを聴き込んでくると、あまりにポピュラーすぎて、だんだん隅っこの方に追いやられがちです。
リムスキー=コルサコフの完璧のオーケストレーションが、誰が演奏しても“エンターテイメント”の曲になってしまい、「もういいかな」と思ってしまうのかもしれません。
筆者もアナログ時代から聴いてきて、SACDでも数枚持っていましたが(なんやかや言って好きなのです、この曲)、どの演奏を聴いてもピンときませんでした。
長年聴きつづけていると、憶えやすい曲だけに、“自分の頭の中で演奏してしまう”んですね。
「第1曲、もっと熱く! 第3曲「若い王子と王女」はもっとロマンチックに! 第4曲はもっと激しく! うーん、どうしてできないの?」と。
こちらは頭の中ですから、思いっきりイメージできるわけです。結局、演奏のほうが追いつかず、どれを聴いても物足りなくて、あきらめていましたが、とうとう満足する「シェエラザード」に出会いました。ゲルギエフ指揮のこのSACDです。
観光気分じゃない、深く過激な「シェエラザード」
ゲルギエフは、ロシア物では白熱の演奏を聴かせる指揮者で有名ですが、この「シェエラザード」もその評判に恥じぬ出来です。あの「春の祭典」並みと言っていいかもしれません。
第1曲「海とシンドバッドの船」、冒頭からメロディーが重厚に進む。まるでドイツ音楽のようです。“エンターテイメント”という軽い衣は脱ぎ捨てられ、エキゾチックな観光気分はありません。「シェエラザード」は“民謡”か、と思うような民族的な地肉が付いた演奏に思いました。
そして最後の第4曲「バグダッドの祭り−海−青銅の騎士の立つ岩での難破−終曲」の、情熱、過激さ、スピードは圧巻です。
第4曲はそれこそ「自分の頭の中」の方が凄い演奏をしていたもので、何を聴いても満足できませんでした。しかしゲルギエフは、越えてくれました。聴いていて「うぉー!」という感じ。身体が動き出しそうです(手はもちろん指揮者モードになってます)。
この演奏、「シェエラザード」を聴きこんだ人にも訴えるものがあると思います。併録の2曲も、なんとなく「シェエラザード風」で、続けて聴いても違和感がありません。いいカップリングだと思います。サラウンドもばっちり。
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 2009.1.13
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