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カルミナ四重奏団
バルトーク:弦楽四重奏曲第1番、第2番

Hybrid Stereo/Multi-ch
国内盤、コロムビアミュージックエンタテイメント

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ブックレットにはカルミナ四重奏団のヴィオラ奏者ウェンディー・チャンプニーの解説訳。石田一志氏の解説。

ベートーヴェンにならぶ弦楽四重奏曲の傑作

 バルトークの弦楽四重奏曲は全部で6曲。作曲家の節目節目に作曲されたので、バルトークの音楽的変遷をあらわしています。どれも傑作で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を「旧約聖書」と呼ぶなら、バルトークのそれは「新約聖書」と呼ばれているくらいなんですね。
 このSACDにおさめられた第1番は1909年、第2番は第1次大戦中に作曲されました。若い時代の作品なので、どちらかといえば第5番や第6番に比べて聴くことが少なかったのですが、今回カルミナ四重奏団の演奏を聴いて、これらもすばらしい曲だと知りました。

オーケストラ作品のような緊張感と厚みを感じる演奏

 第1番も第2番も、室内楽というにはすごく“厳しい”音楽であります。またシェーンベルクの「浄夜」のように感情のほとばしる部分も少なくありません。
 一瞬の隙もないほどの緊張感で進められていきます。もちろんバルトークの書いた楽譜から来る緊張感でしょうが、それ以上に演奏者がただならぬ集中力を込めて演奏している感じが伝わってくるのです。たった4つの楽器だけなのに、まるでオーケストラ作品のような緊迫感を感じてしまいました。
 筆者の場合、バルトークの弦楽四重奏曲は、打楽器的なところや迫力を「20世紀の音楽として聴いて満足」というスタンスでしたが、カルミナ四重奏団の演奏は、新しい側面を見せてくれた気がします。なんというか、“語る”感じが濃厚なんですね。
 とは言っても決して息の詰まった感じはしません。緊迫感の中に不思議と心が広がる気がします。

マルチチャンネルで、迫り来る弦のテクスチャアに浸る

 マルチチャンネルはホールトーンの広々とした残響というより、目の前に弦楽四重奏団が存在するようなサラウンドです。4つの弦のテクスチャアや、演奏者の息吹がリアルに現れます。
 弱音ではまるで管楽器のように消え入るようなかすれ音になり、逆に強音ではこちらが腰を上げそうなほどのアタック音。
 繊細な音から、感情がほとばしる、鬼気迫る音まで(それはまるでシェーンベルクの「浄夜」のよう)、ニュアンスの変化を目の当たりにできるマルチチャンネルだと思いました。

カルミナ四重奏団の参加したSACD
シューベルト〈ます〉、シューマン:ピアノ五重奏曲/田部京子&カルミナ四重奏団
◆2008年レコードアカデミー賞/リーダーズチョイス第3位/CDジャーナル大賞高音質企画
室内楽をリスニングルームで聴くには、ベストな音
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2009.4.20