〈ハイドン・セット〉なかの3曲を収録
モーツァルトの弦楽四重奏曲は、初期のイタリア風の時代と、ウィーンに移り住んでからの時代のふたつの時期に書かれています。このSACDにはウィーン時代に作曲され、ハイドンに捧げられた〈ハイドン・セット〉6曲のうちの3曲が収録されています。
モーツァルトは弦楽四重奏というジャンルでも素晴らしい作品を残しています。どれも素晴らしいですが〈ハイドン・セット〉はもっとも有名でしょう。
第17番には「狩」という名称がついていますが、後世の人の命名です。最初のテーマが狩のラッパのリズム(っぽい)という理由で名付けられたらしいですが、全曲は「狩」の具体的なイメージはなく、コスモポリタン的な広がりと深みのある曲です。
第19番の「不協和音」も冒頭のアダージョに不協和音が出るから命名されたのでしょうが、これもK.458「狩」と同様、音楽のイメージを限定してしまいそうで、どうかなと思います。
ひっきょう、モーツァルトの四重奏曲は、ベートーヴェンの「突き進む感じ」とちがい、浮遊感が魅力と思います。とくにウィーン時代の作品は、言葉ではいいにくいのですが、「固定できないイメージのうつろい」に身を置く感じなんですね。こんな四重奏曲を書けるのはモーツァルトだけだと思います。
筋肉質な厚みのある音、一丸となっての演奏
マルチチャンネルで聴きましたが、リスニングルームの四角い空間を使って自然な奥行き感のある響きで聴けて満足でした。
個人的に弦楽四重奏曲は、CDのペタッとした音場では、聴き続けるのがシンドイのですが、マルチチャンネルはほんと極楽です。
さて、弦楽四重奏曲の音というと一般に枯葉のような渋いイメージですが、このSACDのプラジャーク四重奏団の音は、とても“たくましい音”に聴こえます。
さながら「袖をまくったら筋肉質のモーツァルト」のイメージですが、リアルな弦楽四重奏の音はこれくらいの厚みがあって当然と思います。音楽はとてもモーツァルトらしいので文句なしです。
オーディオ的には、個々の奏者の弦の音にほれぼれします。また4人がフォルテで合奏するときには、カオス的に音響となり、混ざり合うところも特徴でしょう。4人が一丸となって演奏する様が思い浮かびます。
なお同じスタジオで、同じ年に録られたチェコ・フィル弦楽四重奏団のレビューもお楽しみください。
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プラジャーク四重奏団のSACD
 2009.7.25
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