

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲
指揮キリル・コンドラシン
RCA交響楽団
録音1958年
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
指揮フリッツ・ライナー
シカゴ交響楽団
録音1962年
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丸みのあるプラケースにブックレット。全部英語で、クライバーンについてのライナー、曲解説、リヴィング・ステレオシリーズのSACD化にさいしてのテクニカルノート。
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クライバーン、凱旋録音のチャイコフスキーとラフマニノフ2番
このSACDはリヴィング・ステレオ・シリーズのなかの名盤。ヴァン・クライバーンの、チャイコフスキーとラフマニノフのピアノ協奏曲(LP 2枚分)のカップリングです。
アメリカの23歳の若きピアニスト、ヴァン・クライバーンは冷戦下の1958年4月、ソ連のチャイコフスキー・コンクールで優勝。ソビエトの観客も熱狂したといいます。
その熱狂ぶりはアメリカにも伝わり、5月にカーネギー・ホールで凱旋コンサート。その月の末に同じカーネギー・ホール、指揮者はコンクールの時と同じコンドラシンで、本SACD収録のチャイコフスキーのピアノ協奏曲が録音されました。LPはクラシックでは異例のプラチナ・レコードとなりました。
このように書くと当時の熱狂ぶりがよみがえってきそうです。実際、クライバーンの絶頂期は、このあと数年間のようですが、それはそれ、輝いているピアニストの“今”をとらえている歴史的レコードに変わりはありません。
輝く演奏は、若者の特権のような魔力につつまれているよう
僕の世代だと、ポリーニが衝撃的な現れ方をしたピアニストですが、その前の世代の方では、リヒテルやこのクライバーンでしょうか。
実際、クライバーンの演奏はSACDで聴いていても、「なにをやってもうまくいく」というような、若者の特権のような魔力につつまれた演奏に思えます。細部までよどみなく、いい意味で100点満点の面白さ。
ラフマニノフは3年後の1962年の録音ですが、こちらも優勝時の勢いがある演奏。ラフマニノフというとメランコリーな影をおとした演奏が多いですが、クライバーンはどちらかというとピアニズム優先です。
しかし、これも聴きごたえのある演奏で「明快な空気のなかでのメランコリー」といった案配。ラフマニノフの2番は、この演奏でひたったレコードファンも多いはずです。
音楽的な魂では、最新録音に見劣りしない音
リヴィング・ステレオのSACDはどれも良質ですが、このSACDの録音は格別に素晴らしいと思います。
「やっぱり、古い録音だな」と思えるのは、せいぜい弦の高音部分くらい、あとは木管、金管、弦の中低域など、すばらしい音。
特にピアノの音は、現代の最新録音のピアノにまったく聞きおとりしない。むしろ音楽的な魂(具体的には音の厚みと質量)では、この録音の方が上ではないかと思ってしまいます。
チャイコフスキー、ラフマニノフともに、マルチチャンネルにはオリジナルの3トラック録音を収録。センター、レフト、ライトのスピーカーで、広がりと奥行きの感じる空間になります。ピアノも若干、実体感が増すような。
2chで聴くにしてもマルチチャンネルで聴くにしても、最高の音と演奏、かつ2LP分収録してのリーズナブルな値段はお宝です。下にあげた他のクライバーンのSACDも音がいいらしいので、合わせてチェックしてみてください。
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ヴァン・クライバーンのSACD
 2010.4.13
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