
MAYAKO SONE
J.S,BACH:ENGLISH SUITES

録音2003年、2004年
浜離宮朝日ホール
国内盤、エイベックス
SACDハイブリッド 2枚組
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曽根麻矢子のバッハ全集の第1弾。
ブックレットには曽根麻矢子のライナー。樋口隆一氏の曲目解説。
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チェンバロ協奏曲のようなノリノリと、愛らしいメロディ
バッハの鍵盤曲は、すこし内省的な『平均率クラヴィーア曲集』や『ゴルトベルク変奏曲』が有名ですが、個人的には『イギリス組曲』が、一番親しみやすい曲だと思っています。
各組曲の最初に置かれた「プレリュード」が最大の特徴。威厳がありスケールの大きな曲です。まるでバッハのチェンバロ協奏曲のような、ノリノリの音楽、カッコイイ対位法、ストレートに「バッハを聴く喜び」に浸れます。
他にも「ジーク」もノリノリ系、「メヌエット」や「ガヴォット」もチャイコフスキー顔負けの、愛らしいメロディがあらわれる。『イギリス組曲』は2枚組ですが、時間を忘れて聴いてしまいます。
荘厳に疾走する「プレリュード」でさえ“歌心”
と書くのも、この曲を曽根麻矢子の演奏で聴いているからだと思います。
チェンバロは感情表現の少ない楽器のように思いがちですが、彼女の演奏はカンタービレに溢れてます。
叙情的な「アルマンド」や「メヌエット」はもちろん、堂々と、荘厳に疾走する「プレリュード」でさえ、すごく“歌心”があります。
声部の各パートは、歌い合いながら、絡み合い、進んでいきます。左手の伴奏パートでさえ、メロディとして耳に入ってくる。
仏エラート・レーベルが、彼女を夭折したチェンバロ奏者スコット・ロスの意思を継ぐ者として、日本人初のCDリリースしたのも分かる気がします。
マルチチャンネルでは、音楽を豊かに響かせる残響音
まずSACDステレオで聴いてみました。
SACDで聴くとチェンバロの音は、本当にいいです。昔は金属的だと思っていましたが、実はとても暖かいニュアンスを感じます。
それは厚みがあり、変化のある音色。無数の木の葉がキラキラと、無限の彩りをもって目の前で踊っているようです。
SACDマルチチャンネルでは、録音された浜離宮朝日ホールの空間が出現するわけではありません。奏者と同じ部屋にいるような、SACDステレオと大差ない音空間です。
違いはホールで聴ける、あの音楽を豊かに響かせる「残響音」。マルチチャンネルでは、それがリスニングルームに広がり、チェンバロの音に艶を与え、瑞々しくさせています。
あと奥行き感が少し出て、再生音がストレートにリスナーに向かう割合が少なめかと思います。
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曽根麻矢子のSACD
 2010.8.24
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