
Rene Jacobs/Concerto Koln
MOZART:LE NOZZE DI FIGARO

録音2003年
輸入盤、Harmonia mundi、
3枚組。
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深さ3センチ弱の箱入り。3枚のSACDを収めたデジパックとブックレットが入っている。
285ページのブックレットにはイタリア語と仏英独語訳による歌詞全部。ルネ・ヤーコプスによる解説文には、オーケストラ演奏の装飾やテンポ、レチタティーヴォ、通奏低音に関する考察(先の4カ国語です)。
あとスタジオ録音風景のカラー写真がほんの少々。
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独唱、アンサンブルに素晴らしいアリアがあふれるオペラ
SACDによる、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」の全曲盤です。
「フィガロの結婚」はモーツァルトの数あるオペラの中でもひときわ魅力的です。親しみやすいアリアが多い。フィガロの「もう飛び回ることも出来ないぞ、かわいい蝶々よ」。ケルビーノの「恋とはどんなものかしら」、スザンナと伯爵夫人の手紙の二重唱「そよ風によせて」などなど、つい口ずさみたくなるメロディです。
これら単独アリアはハイライト盤でも聴けますが、「フィガロの結婚」はアンサンブルもいいので全曲盤がおすすめ。“3枚組捨て曲なし、あたかもベスト盤のよう”というのが「フィガロの結婚」全曲盤なのです(時に長いレティタティーヴォは我慢しましょう)。
それにしても登場人物の笑い、恐れ、怒り、うろたえなど、心の“あや”まで描き分けてしまうモーツァルトの音楽にはホレボレしてしまいます。
第4幕などその最たるもの。ドタバタのなかにも音楽が繊細に移ります。とくに大円団、浮気がばれて謝罪する伯爵、続くそれを許す伯爵夫人の歌は、人間が書いた音楽でこれほど愛に満ちた旋律はないのでは、と思うくらい感動的です。
キビキビと小気味よく強打、そして羽のように繊細な古楽オーケストラ
オーケストラは古楽器です。弦の音は現代オーケストラと違い、とても金属的。奏法もキビキビとしていています。強弱はハッキリし、アクセントも強いので、オーケストラ全体が強打してくる感じです。
小編成のオーケストラですから空間の抜けがいい。弦にからむ木管の柔らかいオブリガード、その合間をぬって破裂するようなひずみを持つ金管音、モーツァルトの書いた音がすべて聴こえるようです。
しかし静かなアリアでは一転して、羽のように繊細な音になり、管楽器もとても美しい。
通奏低音は当時のピアノであるピアノフォルテ。オーケストラのサウンドにブレンドしています。個人的にはチェンバロよりもピアノフォルテのほうが、“モーツァルトの時代 ”をより感じられて好きです。
マルチチャンネルの第4幕、これぞ大円団。
SACDステレオで繊細な音を楽しむのもいいのですが、マルチチャンネルはさらに魅力的です。ホールというより、大きな室内という残響。まるで自分が同じ室内にいる感じです。
前方に立体的にあらわれるオーケストラ空間。その前にくっきりと歌手が並びます。目の前で歌っているようで声がナマナマしい。みなキビキビとした歌いぷりで、オーケストラに負けないくらいの小気味よさ。
マルチチャンネルではほとんど前方で演じられますが、ドラマ上、物陰にいる人物はレチタティーヴォがリアの左(または右)に配置され、目の前で演じられている感じをさらに高めてくれます。
先に書いた第4幕ラストでは、登場人物がほとんど歌いだす(いったい何人だろう)。気づけば歌手たちは“扇状”に左右に大きく広がって歌っています。オーケストラもトゥッティ。通常のステレオ再生だったら窮屈に感じるところですが、マルチチャンネルの再生空間は大円団にふさわしいダイナミックな空間を表現してくれるのでした。
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ヤーコプスのモーツァルトのオペラSACD
 2009.8.18
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