イギリスのジェントルなプログレ。ムーディー・ブルース
冒頭、サターンロケットを思わせる効果音にド肝を抜かれる。 本アルバムは、1969年暮れ発表の作品。その年の〈アポロ11号月着陸〉の影響もあるでしょうね。 ここでは、ムーディー・ブルースの曲作りも、ますますサマになってきて、音は繊細かつ、厚みを帯びてきます。70年代の音作りが、すでにこのあたりで始まっているのがわかりますね。
このアルバム、邦題では『子供たちの子供たちの子供たちへ』という。僕も高校生の時、ムーディー・ブルースにハマっていたときLPを買いました。 でも、残念ながら、このLPをもってムーディー・ブルースは聴くのをやめてしまった。じつは僕がムーディー・ブルースの筆をおいたアルバムであります。なぜか? 「気持ちはわかるが…」というのがそのときの感想です。 アルバムも各曲自体はいいのだが、ちょっと細かくつなげすぎた。それで当時は「気持ちは分かるが、うすいアルバム」に思えたのでした。ようするに、世相的にトータルアルバムへの期待が高すぎたわけだ。 「素晴らしいSACD化。ステレオもマルチもよし」と子供たちの子供たちの子供たちまで伝えたい。 しかしこのSACDで、ほんと30年以上ぶりに聴いたわけですが、いや「これが結構いい!」のであります。 じつは今日まで 「ひょっとして、あのとき聴き足りなかったのではないか」 という後悔はあったのです。 やはりSACD化(特にマルチチャンネル化)で、蘇ったような気がします。 「デジタル臭くないサラウンド(アナログライクなサラウンド)だなあ」 と最初思ったのですが、それもそのはずで、マルチチャンネルは、当時の4チャンネル・ステレオ用のマスターを5.1chに落とし込んだものだそうです。なのでセンタースピーカーは鳴っていないと思う。 マルチもいいですが、SACDステレオでも、音の伸びやかさがちがいます。とにかくSACD化で、きめ細かく、やわらかい音で聞けるのはうれしいです。
しかしあれから30年以上たちますか。一世代たっているわけだ。アルバムタイトルの「子供たちへ」なんて、時間にしたら一瞬ですね。
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2006.7.29
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